期日 | 平成28年4月9日(土)~10日(日) |
会場 | 川西町フレンドリープラザ |
ふるさと川西町で2回目の開催となった「吉里吉里忌」。ようやく春の兆しが感じられる陽気の中、ゆかりの深い豪華ゲストをお招きして、お集まりいただいた500名のみなさんとともに、あらためて井上ひさしさんの人と作品に親しむ機会となりました。
ゲスト | 鈴木文彦さん(元文藝春秋編集者) |
烏兎沼佳代さん(編集者) | |
聞き手 | 古屋和雄さん(元NHKアナウンサー) |
元NHKアナウンサーの古屋和雄さんを聞き手に、元文藝春秋編集者の鈴木文彦さんと編集者の烏兎沼佳代さんからお話を伺いました。
ゲストのお二人にそれぞれご準備いただいた写真を大きなスクリーンに映しながら、鈴木さんは、担当された小説『東京セブンローズ』の執筆裏話を中心に、井上さんがカンヅメになって原稿を書くときのエピソードや直木賞の選考会の様子などを、烏兎沼さんは、いちファンとして山形の高校の演劇部で作品を上演した頃から、編集者としてドキドキしながら本を作った思い出などを、ともに井上さんへの敬意と親しみがあふれた雰囲気の中で楽しくお話しいただきました。
渡辺美佐子さん(女優) |
大笹吉雄さん(演劇評論家) |
山口宏子さん(朝日新聞論説委員) |
井上芝居をテーマにした鼎談には、長年演じた『化粧二幕』をはじめ4本のお芝居に出演されてきた渡辺美佐子さん、演劇評論家として井上さんの劇作をデビューからすべてご覧になってきた大笹吉雄さん、全国紙の演劇担当記者として数多くの取材やインタビューを行ってきた山口宏子さんにご登壇いただきました。
渡辺さんからは、芝居が上演されるまでのご苦労を包み隠さずご披露いただき、なかでも遅れた台本が届くまでのエピソードは迫真のお話しぶりで会場を爆笑に包んでくれました。大笹さんには、日本の演劇史における井上演劇の果たした役割を、『紙屋町さくらホテル』などを例に理路整然とそしてとてもわかりやすく解説いただき、そして山口さんには、渡辺さん、大笹さんお二人のお話を引き出しながら、井上作品を「観客の想像力」、「歌や踊り」、「死者との交感」、「演劇の言葉」などのキーワードで鮮やかに切り取っていただきました。
作家であり古書店も営む出久根達郎さんからは「井上ひさし氏と本」というタイトルでご講演をいただきました。お二人には、平成4年に出久根さんが直木賞を受賞された時、井上さんが選考委員をされていたというご縁があります。
出久根さんには、出会いや講演旅行などの思い出を辿りながら、「言葉の大切さ」や「本」、「井上流本の読み方10個条」にまつわる逸話や薀蓄を、作品そのままの練達な語り口で縦横無尽にお話いただきました。
以上のプログラムの合間には、実行委員長の阿部孝夫遅筆堂文庫館長と開催地の原田俊二川西町長のあいさつ、遅筆堂文庫遠藤敦子学芸員からの活動報告、つきたてのお餅や地元の食が楽しめる物産市、井上さんが作詞した「旧川西第二中学校校歌」の披露などがありました。
また、ロビーでは井上さんが学生時代に翻訳した『讃血亜護騎士団長』の原稿が初めて展示公開され、来場者の注目を集めました。
会は最後に井上ユリ夫人から「来年4月にまたここで会いましょう」とあいさつがあり、充実した日程を終了しました。
ご来場いただいたみなさん誠にありがとうございました。